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お腹の底に砂が溜まるよう

毎日をやり過ごし、ないものをねだり続ける自分の心にこれ以上付き合っていくのはとても大変なことだ。お腹の底の砂を拾って口に含んで、がりがりと噛み締めてみたいと思った。そういう心の動きは、きっとあまり正しくはないけれど、間違った心ごと秘密にしてあげたら、きっと自ずとそれは自分を大切にすることにつながるかもしれない。でも本当はわかっていて、たぶんつながらないし、すごく絶望した気分になる。

 

太ったおじさんの、まあるいお腹を眺めていたら、すこしだけ哀しくなって、この世界で息をしている自分の心臓の音が指先まで響いてくるようだった。

 

死ぬことは怖い。病気になることは怖い。失うことは怖い。見放されることは怖い。ひとりぼっちは怖い。そういう怖さのひとつひとつを実感してみたかった。

 

彼氏がいるか聞かれたので、いますって答えたけど、どんなに頑張っても顔を全然思い出せなかった。全然思い出せないことばっかりだった。みんな知らないひとだったし、自分の体の外界との境目から宇宙に放り出されたような気分だった。不安でもなく、安心でもない、心地よくも苦しくもない。ただ宇宙人としての自分がそこにいるだけ。自我があって、感触があって、喉を震わせたらたまたま声が出た、みたいな、そんな感じだった。

 

自分より大切な人なんかこの世にいるわけないって、思えたらいいなぁ。人間は哀しい生き物だ。ワガママで、俗っぽくて、矛盾していて、いつも何かを持て余してしまう。みんなそんなふうに感じて生きているんだろうか。